大雨と飛行機とビジネスマンと・・・



 あれは今からちょうど4年前。当時大阪に住んでいたわしは新入社員研修のために東京へ来ていた。三日間の研修を終え、同じ大阪のグループに配属されることになった、はせぴょんと一緒に駅までの帰りのバスに乗るため、本社から一歩外に出た。そこは叩きつけるような大雨。空は真っ暗。雨粒は白い。道路の脇は半分水没している。なんとかバスに飛び乗ったが、道路を行く車は、白鳥の翼のように水しぶきをあげながら走るありさま。わしらは同じ大阪へ向かうのだが、わしは羽田発伊丹行きのJAL、はせぴょんは東京駅から新幹線。一応飛行機の方が数十分早く大阪に着く予定だった。

 駅で別れたわしら。わしは羽田空港へ向かった。初めてやって来た羽田空港の出発ロビー。これまで空港は慣れていたが、なにやら雰囲気が異様だった。電光掲示板を見上げると、
「悪天候のため滑走路閉鎖」
との表示が・・・。聞けば件の大雨のために、飛行機が飛ばせない状態だとのこと。いつになるか全く分からないけども出発まで待つか、全額返金を受けて他の手段を選ぶかの選択肢が示された。ただし、伊丹空港は午後10時に閉鎖となるため、もしもその時間を過ぎたら関西空港に降ろされる可能性もあると・・・。
「その場合、関空からの帰り道は用意してもらえるのですか?」
「天候の都合ですのでなんとも致しかねます・・・」
カウンターの人の言葉ももっともだった。いわば天災なわけだから、そんなものまでいちいち保証なんかしていられない。全額返金してもらって新幹線に行こうかとも思ったが、すでに時間が結構遅くなりつつある上に、新幹線が動いているかどうかもわからない。当時はEZWebに契約してなかったので、運行状況など知る術がなかったのだ。迷いに迷って空港でしばらく待つことにしようと。最悪の場合大垣夜行もあるだろうと・・・。

 とりあえず暑苦しいスーツと革靴を脱いで、Tシャツとサンダルに着替えた。飛行機にしろ鉄道にしろ楽な格好で移動するに越したことないやんねー。ていうか、カナダから帰国して一ヶ月ちょっとだったわしは、いつでもどこでもラフな格好のCanadian Styleが気に入ってたのだ(笑)。

 着替えが終わって出てきたところに滑走路が再開されたとのアナウンスがあった。スーツケースを引きずっていたわしは手荷物を預けようとカウンターに近づいた瞬間、
「・・・大阪行きは10番カウンターで受付を・・・」
というアナウンス。まさにわしが立っていたそのカウンター。直後、イス取りゲームのごとくものすごい形相の人々が殺到。みな出張帰りか知らんがスーツ姿。わしはすぐそばにいたのでなんなく荷物を預けることが出来たけども、なんだかな〜。

 そんなこんなで乗り込んだ飛行機。予定は7時半過ぎ出発。現在時刻は8時15分過ぎ。伊丹まで一時間弱だから余裕で間に合うはず。やがてタラップから離れた飛行機は静かに滑走路に向かった。外はさっきまでの大雨が嘘のように星空が見えて、濡れた路面と誘導路のランプが光って幻想的・・・。と、滑走路に向かう途中で飛行機が止まった。ほどなく機長からのアナウンスが。
「出発待ちの飛行機が十数便並んでおりますので、45分後に離陸の予定です」
え〜っと、今が8時15分だから離陸は9時? 伊丹まで一時間弱だからギリギリ??

 離陸までの重苦しい時間、機内では7時のNHKニュースが繰り返し流されていた。そこでは東京を襲った激しい夕立のニュース。そして飛行機が止まった羽田空港の様子。今まさにその空港にいるのだが、録画だから運航再開の様子は流されるはずも無い・・・。同じニュースを二、三度繰り返し見た辺りで、ようやく離陸の態勢に入った。時刻は9時近かったようだ。

 飛び立った飛行機は深い雲の中を飛び続けたようだった。激しい揺れ。重苦しい空気。機内全体がなにか焦っているようだった。揺れのために飲み物のサービスも無いまま、三十分ほど経過したところでアナウンスが、
「当機は伊丹空港の着陸時間を過ぎましたので、これから関西空港へ向かいます。約20分で関西空港に到着いたします」
機内のあちこちからため息が聞こえた。

 ほどなくやってきた関西空港。これまで何度か利用したことはあったが、国内線に降り立つのは初めて。降り口ではJALの職員が謝っている。別にJALの責任でもないのに謝るところ、さすが日本のサービスだ。感心しながらタラップを降り、手荷物を受け取りに行こうとしたら、地上係員がつるし上げを喰らっていた。スーツ姿のおっさんども数十人が地上係員三人ほどを取り囲んで罵声を浴びせていた。
「こんなところにおろしやがって、どうやって帰れっちゅうんじゃ!」
「わしは川西池田に帰りたいんだ! バス出さんかい!」
「神戸までのバス終わってるってどういうことだ!」

えっと、これは天候のせいで遅れたんでしょ?
JALの落ち度じゃないんでしょ?
なに熱くなってるの?
時刻は10時半。まだ電車もある時間でしょ?
これ関西空港でよかったやんね。羽田に引き返しとか名古屋空港とかだったらもっと悲惨だったんじゃないの?
なんでこんなにこの人らは余裕がないの?
これカナダだったら冷たくあしらわれるどころか、相手にもされないよ。
こんなクレーム取り合ってくれるの日本だけだよ。
あんたら日本に住んでてよかったね。
ていうか、地上係員が安岡力也みたいなのでも同じ調子でクレーム言えたの?

 そんな余裕の無いジャパニーズ・ビジネスマンどもを横目に、わしは出張旅費の精算に必要な遅延証明の様なものだけを貰って到着ロビーを後にし、「はるか」が終わっていたので関空快速で帰った。

 今でもこの時期、大雨が降る度に
「あんなみっともない大人にはなりたくないねヽ( ´ー`)ノ」
と思うのだった。

Posted: Tue - July 6, 2004 at 09:37 AM          


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