見知らぬ妻へ /
浅田次郎
踊子
スターダスト・レヴュー
かくれんぼ
うたかた
迷惑な死体
金の鎖
ファイナル・ラック
見知らぬ妻へ
(光文社文庫)
短編が8本。いづれもなんというか、オチらしいオチもなく、読み終わったあとで一つの話が終わったというよりは、その人の人生の一コマを見せられたような気持ちになれる話ばかり。
「うたかた」。これは泣けた。テレビがまだ珍しかった時代に、幸運にして得られた郊外のマンション。そして予期せぬほど立派に育って巣立っていった子供達。その後に待ち受ける老婆の行く末。こんな人生が今の日本には溢れているんだろうけども、主人公本人にはあまり悲壮感が感じられない。しかしどこか悲しい。
「迷惑な死体」これは激しく笑った。テンポがよすぎるし、オチもついてるし、主人公がこの先幸福になれることを祈る(笑)
表題作の「見知らぬ妻へ」。これは泣けた。というか予期できたオチとはいへ、あまりに悲しすぎる結末。救いようのない結末。
どの作品も、最初のシチュエーションがよくわからないのだが、読み始めてから主人公の人となりが読み進めていくうちにわかってくるというのが上手い。変に解説がないぶん、読んでいて、
「ははぁ〜」
と納得できた瞬間が気持ちよく、それから物語にずっと吸い込まれていく。
Posted: Wed - November 10, 2004 at 10:14 PM